「お嬢様は…あまり信頼されているお友達がいなくて心配されていましたが紫白様には素直になれるようですね」
別室につき煙草を吸いながらただ静かに殿内の話を聞いていれば不意に動きを止め視線を殿内へと移す。
「…裕香の気持ち、気付いているんですね…」
「ははっ…まあ執事ですし、わかりやすいですからね」
少し不安な色を瞳に宿らせ話す殿内にふっ、と笑みを溢す。
「…私のこの仕事のまま、旦那様にお許しがもらえないのなら認められる器になってから出直すつもりです」
殿内の何かを決意している瞳に笑みを溢し「頑張って下さい」と小さく呟く。
「…さて、そろそろ支度も終わった頃でしょうし、向かいましょう」
腰を上げ微笑みながら話す殿内に軽く頷き椅子から立ち上がれば扉の方へと向かう。
「…そうだ、先程の話。…お嬢様には秘密ですよ?」
先程までとは違う悪戯っ子のように笑い口元に指を当てる殿内に同じく微笑み頷けば裕香の部屋へと向かう。
「お嬢様、終わりましたか?」
「…ええ、どうかしら…?」
部屋から出てきて少し顔を赤らめ不安そうに瞳を揺らがせ聞く裕香にふわっ、と微笑む殿内。
「綺麗ですよ、お嬢様」
「…あ、ありがとう…」
頬を赤く染めながら返答する裕香に幸せそうに見つめる殿内。
きっと、二人ならいつかは結ばれるんだろうな…
不意にそんな事が頭を過ぎり二人につられ笑みが溢れる。
「…さて、旦那様がお待ちです」
「そうね、行きましょう」
裕香の言葉に頷けば案内されるままにパーティー会場でもある部屋へと着く。
「……はぁ…」
会場につけば、その人の量に誰にも気付かれないように小さく溜息をはく。
「……仕方ない、か…」
気持ちを切り替えるように呟き裕香の横につき歩き回る。