「……ここ、か…」


私の目の前には立派な和風の屋敷。
もっと洋風かと思ったけど…意外。


バイクで門の近くまで行けば門番に話しかける。


「依頼された護衛の者です」

「中へお入り下さい」


話がわかっていたのか直ぐに中へ案内されバイクを預け屋敷の中へ入る。


「始末屋の方ですか…?」


玄関に上がってすぐの所にいるのは、私と然程年がかわらなく見えるスーツ姿の男。

その男にコクりと頷けば申し訳なさそうに眉を下げ謝る。


「…すみません、あまり年齢がかわらなく見えたもので…私、執事の殿内 惇(トノウチ アツシ)と申します」


「……紫白、そう呼んで下さい」

「紫白様、ですね。ではお嬢様の所へご案内致します」


殿内に案内される途中も少し話をしていればやはり年齢は二つ上と、かなり近かった。


「…お嬢様、お連れ致しました」

「惇っ!!…こんにちは…」


少し弾んだ声に続き扉が開けばお互いピタリと動きが止まる。


「……この前の…」

「…波留の、お友達の……」


私の前に目を丸くし驚いているのは、波留の元カノでもある溝江 裕香。


「…お知り合いでいらしたのですか?」


沈黙を破るかのように不思議そうに声を出した殿内の言葉に少し焦りながらコクコクと頷く裕香。


「……惇、少し席を外して?お話したい事があるの…」


裕香が、ぎくしゃくとしながら言えば殿内は何かを感じたのかすんなりと部屋から出ていきパタンっ、と扉の閉まる音だけが後に響く。


「…とりあえず、座って下さい…」


裕香に促され座れば暫しの間、沈黙が続く。


「私のこと…波留から聞きましたよね…」


その言葉に一瞬どきり、と心臓が弾むが平静を装い静かに頷く。


「……波留は傷付いたと思う…」

別に責めるつもりはない。
…けど、傷付いていなかったらあんなに女嫌いになる筈がない。


「そうよね…私は波留を自分の為に利用したんだものね…」


反省しているのか眉を下げながら話す裕香が気になり黙っていたが口を開く。


「…何か理由があったの…?」

「……私、好きな人がいるの、でもその人とは結ばれないの」


諦めたように話しはじめる裕香に次第に眉間に皺が寄り苛立ちが募り始める。