2時間目が終わり、休みになった頃。


たまたま職員室を通り掛かった私を担任が呼びつける。


「市川ぁ~。」




「な、なんですかッ?」


「丁度イイ所に来てくれたぬぁ~!このノートクラスの皆に渡しておいてくれ~ぃ。」


担任はノートの山を私に渡す。


ズシッ…。



お、重っ!!



「頼むぬぁ~。」


遠くで陽気に手を振る担任にイラッとくるが、仕方なく教室へ向かった。



「はい。西山さん。」


「はいっ。マーチ。」


次々と渡していく度、いつしかノートは1冊になった。



「えっと…次はぁ…」

ノートの名前を見て私は一瞬固まる。




“唯井新政”





ちらっと唯井新政の席を見ると、唯井新政は座っている。



これは…手渡ししか道はないじゃないか…っ!



ゴックンちょと唾を飲み込み、すぅっと息を吸って緊張をやわらげる。



無理に笑顔を作って唯井新政の席へ近付いた。


「はいっ。新政くんノー………ト。」



ノートを渡そうとした瞬間、唯井新政はスッと席を立って教室を出て行った。






「なに…あれ。」


ミネちゃんは異様な出来事に驚く。








「……市…。」



下を向く市を清ちんは心配そうに眺めた。