計画が失敗したため、里子ちゃんは勇気を出して痴漢野郎に言ったのだろう。


痴漢野郎はいかにも怖そうな眼鏡オヤジ。


里子ちゃんは必死に那己くんを庇っている。




「さ…里子ちゃん…ッ。私行ってくる!」


里子ちゃん達の方へ向かおうとする私の手を唯井新政はぎゅっと掴む。



「やめろよ!お前が危ないだろ!?」


「で…でも…ッ」









しかし痴漢野郎はついにキレだし、里子ちゃん目掛けて手をあげる。



「きゃ……ッ」


「やめろ!!!」




その手を、誰かが止めた。










「な…なんだお前ッ!」


痴漢野郎はその茶髪頭の男を指差す。









「女の子に手出すなんて…最低な野郎だなぁ。」


茶髪男は握りしめた手をギリギリとひねる。


「痛てててててッ!!」











電車の扉が開いた時、痴漢野郎は逃げるように飛び降りた。




「お…覚えてろよー!!」



「もう忘れたわ!バカめ!!」






その一瞬の出来事を、電車内の人々は唖然としている。






「大丈夫か?お嬢さん。」


「…は…はい…。」