第一理科室に移動した私たち。


授業にはギリギリ間に合った。


まぁ間に合ったって言っても、
チャイムが鳴り終わったかまだ鳴り響いているかどうかの微妙なタイミングで理科室の扉を思いっきり押し開けたんだ。


先生は呆れながらギリギリ遅刻からは逃してくれたが、

その代わり3人してクラス全員から注目をあびた。


私にとってはみんなからの視線がすごく痛く感じたが、
桐山は恥を知らないのか

「しょうキングの参上だーい」

とかいいながら変なポーズをしている。


それに対し「やられたー」とか「勝ちゃんかっこいー」とか言う男子の声が舞った。


私は冷たい目で桐山を見ていた。


綾乃も大きくため息をついて席に着いた。


いい年の高校生がヒーローごっこをしている中、一人読書をしている男の子がいた。




「さっきの…」



私はそっと彼に近づいた。



そこには、真剣な目で本を見つめている姿があった。



ちょっと話しかけずらかったけど、

せっかく同じ班なんだし少しくらい話してもいいかなぁなんて軽い気持ちで話しかけてみた。


「あの」




「……」





これは無視なのかな。


それとも本当に聞こえてないのかな。



私は顔をひきつらせながらもう一度話しかけてみた。




「あの!」



すると彼は、少しびくっとしてきょとんとした目でこちらに目を向けた。




「あの…」




「何?」




何か話そうと思って話しかけたのに関わらず、いきなり戸惑ってしまった。



「ええっと…隣、いいかな」



私は彼から少し目をそらして、おどおどしながら言った。



「うん。いいよ」




そう言って彼は、隣にあったイスを引いてくれた。



さっきのとは別人みたいだ。




「あ…ありがとう」




すると彼はふんわりと笑い、読書を続けた。




続けるんだ…




ここは私から話を切り出さなければいけないのか。