「いらっしゃい」

 優しく呼び掛けら

 れて、のろのろと

 進み出る。

 「大丈夫、痛くな

 いわ」

 勝ち気そうななな

 みは金具の錆び付

 いた棺のふたをあ

 けた。中は、隙間

 なく針でおおわれ

 ている。こんなの

 に入ったら、痛い

 なんてものじゃな

 い。

 「いらっしゃい」

 猫なで声に、髪を

 掻きむしっていた

 女は、壊れたよう

 に首をふる。

 「痛くないって言

 ってるでしょう」