「しばらく二人で
旅行なんて来れねぇな」

あたしの髪を撫でながら言った。

「…そうだね」

カチっと、小気味良い音を立ててライターで煙草に火を点ける。

窓の外は、ようやく薄明かるくなってきた頃。

あたしの一番好きな時間。

「お前、そろそろ
本命の男作れよ?
なあ、志麻」
「…要らない。
友之以外の男に
抱かれたいと思わない」

心の何処かが痛い。

友之には分からない

あたしがあなたを、どれくらい『本命』として愛しているか…なんて。