「今ちょうど家にいるから上がっていかない?」


「はい」


母親の後ろに隠れていた美姫は、恥ずかしそうに俯き加減に答えた。


「私達は引越しの後片付けがありますので」


美姫の父親がそう言って、二人は笑顔で一足先に去って行った。


「お邪魔します」


と美姫が玄関に上がると、


「恵~、あんたにお客さんだよー。早くこっちにいらっしゃい」


と私の部屋のドアをドンドン叩いた。


母は江戸っ子でチャキチャキしている。


「何なの、今昼寝してたのに~」


私は寝起きのボサボサ頭でリビングに行った。


それが美姫との初対面だった。