「はい、タイリン」


トーリはオレによく塩むすびを作ってくれた。


この時代は米や小麦は食べられたけど、家畜等は死滅してしまったので肉は食べられなかった。


そして甘い物等の嗜好品も作る余裕が無かった。


ヒューマノイドはそのような欲求を抑えられている。


主食は投与した薬品の効果を持続させるゼリーだった。


ただ、これだけだと顎が弱まってしまうので、人間が食べる物も少しは摂取するようにと博士に言われていた。


梅干しも入っていない、塩を振っただけの何の変哲もないおむすびだったけど、トーリが一生懸命作ってくれたことを思うとオレには何よりも美味しく感じられた。


トーリは時々膝枕もしてくれた。


親がいないオレにとっては、トーリはかけがえのない存在だった。


ヒューマノイドはそれぞれを皆家族だと思っていた。父が博士だった。