日本政府はこのことを予測していた。


アメリカが近々原子力ミサイルをロシアに向けて発射するという情報は、日本が開発した最先端のスーパーコンピューター“戒”によってもたらされた。


戒は各国の衛星やインターネット回線から情報収集出来る能力を備えていた。


戒によってアメリカの策略を知った日本政府は、密かに“ノアの箱舟”の建設を進めた。


東京の地下100kmに作られたそれは、東京ドーム程の大きさで浮上可能な巨大戦艦といった感じだった。


ここに日本国民全てを収容することは不可能だった。


戒の開発者である当麻博士を始め、内閣総理大臣、大臣、有能な科学者、そしてその家族のみがノアの箱舟に乗り込むことが出来た。


アメリカがロシアに原子力ミサイルを発射することは分かっていたものの、詳しい日程は分からなかった。


分かった時には当麻博士の妻と娘が中国に旅行中で間に合わなかった。