「それって人間としてどうかと思うけど」


「ひぃぃ、落ちる。助けてぇぇ」


男は手を滑らせて今にも落ちそうな状態だ。


相手はそばにいて、それを見守っている。


「落ちちゃえば。録画はしてないから☆」


おかしそうに笑った。


「落ちるう、落ちるぅ~」


男が泣き叫ぶ。


「ぎゃああああ」


男の絶叫が辺りにこだました。


「人間ごときが」


そこは美姫が落ちそうになった歩道橋ではなかった。


全長333mの東京タワーだった。