宇美がバイトを始めた理由はこずかい稼ぎでも、社会勉強でもなかった。本当の目的は“おかず探し”だ。オナニーリストの登録者を増やすためだ。要は自分の性的欲求を満たす男との出会いを求めていた。男性客を一人一人チェックした。女性はアウトオブ眼中。年上の男で、さらにカッコイイ人を探していた。カッコイイといっても、宇美のそれは他人とは基準が違っていた。ジャニーズ系よりもアニキ系が好みだった。下半身への関心も高かった。ズボンの密着度、ケツのデカさ、食い込み度。モッコリ度。宇美は接客が好きだった。店長の酒巻も宇美の接客態度は丁寧で、好感が持てると褒めてくれた。今時の高校生にしては珍しいとバイザーにも褒められた。将来はゲイバーにでも勤めるかなんて冗談で思った。スーツを着こなしたカッコイイ男が来た時はうきうきした。
「いらっしゃいませー!こんばんはー!」
宇美はその時だけ意識して声をデカくした。普段はその10分の1しか出さないくせに…。レジに来た時はドキドキした。この時はとばかりに顔をマジマジと見た。顔を見ないともったいない。大概の客は目をそらしていた。余裕があれば財布とか、時計とか身嗜みとか股間を短時間でチェックした。目があった時はエクスタシーだった。
「いらっしゃいませ。袋にお入れしますか?」
「お弁当は温めますか?」「お箸はお付けしますか?」
「〇〇が〇点。」
「合計〇〇〇円です。」
「〇〇〇円札でよろしいですか?〇〇〇円お預かりします。」
「〇〇円のお返しです。ありがとうございました。またおこし下さいませ。」
面倒くさくて普段は言わない読み上げ登録もちゃんとやった。いい子ぶりをアピールするためだ。なんてぶりっ子なんだろう。自分でも呆れるほどおかしかった。ついでに臭いも嗅いでみた。加齢臭がしたらアウト!爽やかなフレグランスはセーフ、無臭がヒットだった。なるべく客と会話をしようと必死だった。少しでも長くその人を見ていたかった。お釣りを渡す時はわざと手に触れてみた。手の温もりを感じるためだ。冷たい人はNGで、逆に温めてあげたいと思った。買った賞品すら覚えていた。その人が持っていかなかったレシートをもらっておいたりした。店を出ていくまでずっとケツを見送った。そして夜はその人を想像してオナニーをした。これが止められなかった。