クラスが別になって、宇美は光男といる時間が少なくなった。会うのは昼休みぐらいだった。たまにバイトがない時、駅下のタックで会った。いつもハンバーガーとコーラを頼んで、互いにたわいもない話をした。光男は相変わらず麻田マヨの話を最初にした。あとはミクティの話を中心に盛り上がった。二人ともマイミクは北海道から沖縄まで日本各地に増えていた。足あとがたくさんついていた。
ハンバーガーをかじった後、光男が思い出したように尋ねてきた。
「そういえばさぁ、“一”って誰だかわかったの?」「いや、結局わからなかった。だけれど、そのことはもういいんだ。」
「もういいって、何かあったの?」
光男に話すべきか、一瞬迷った。でも、別に隠すことじゃなかったから宇美は正直に言った。
「約束したんだ。お互いを詮索しないって。それがマイミクでいるための条件だから。」
「そうなんだ。なんか面倒くせぇな。」
モゴりながら、光男は言った。宇美は他のことは話さなかった。少し沈黙の時間が流れた。有線で流れるヒット曲が急にデカく聞こえる。
「お前がそれでいいなら、いいんじゃね。」
光男はボソッと呟くと、
「あっ、そういえばさぁこの曲知ってる?」
と話題を変えてきた。宇美は少しホッとして、コーラを吸い上げた。