速水は教職員の棟に住んでいた。宇美の父は役所職員なので、速水とは別の棟だった。別れる時、速水は右手を差し出した。宇美は左手を差し出して握手した。手が温かかった。
「じゃ、また明日な。」
「はい、さよならー。」
階段の前で二人は別れた。階段を一段一段上がりながら、宇美は速水について考えていた。速水と個人的に話したのは初めてだった。でも何故か昔から知っているような懐かしい感じがした。その日以降、宇美は時々速水と帰ることになった。