「さあさ、姫さま。しばらくじっとしていてくださいましね。」



乳母のマルタが、ガルンの裸の肩に大きめのタオルを掛けながらうきうきとした声でいう。
ガルンは渋い顔をしながらもおとなしくされるがままになっていた。


背後でいそいそと作業を始めたマルタを尻目に、手持ち無沙汰のガルンはひざにあごをのせて自分のつま先をにらむしかなかった。
浅く張られたお湯の中で、柔かみの少ないやせっぽちの素足がゆらゆら揺れている。


――ドレスを早く選べと母と乳母に迫られ、気に入ったものがないと決定を先のばしにしていたら、今度は髪を洗えと命じられた。

どうせ儀式の前日に洗うのだからいいと抵抗したが、ほったらかしで傷んだ髪ではおめかしも台無しだと詰め寄られ、しぶしぶマルタに髪を洗ってもらうことになったのだ。