エリザは手近に落ちていた1着を拾い上げると、とりなすように微笑んだ。


「ほら、これならどう?
刺繍も赤が多いし。」


それは春の曙をそのまま写し取ったような、鮮やかなピンク色だった。

裾の刺繍は深い臙脂で描いた野バラ。美しい渦巻きをつくるいばらのそこここに、純白のバラが花を咲かせている。



「…そんな可愛らしいの、あたしに似合うわけない。花柄なんて嫌い。」



上から下までじろじろとながめ回した挙句、ガルンはぷいと横を顔を背けた。


とりつくしまもない。



「そんな…ピンクが似合わなかったのは小さいときの話でしょう。
今なら似合うかもしれないわよ?」



そうなだめながらも、エリザはあっさりそのローブをたたんでベッドの上に置いた。


娘に花柄やピンクが似合わないだろうというのは、母にも分かっているのだ。