「なんで・・・そんな深々頭下げるのよ。」



片ひざをつき、深々と頭を垂れ、左胸に右手を添えたその仕草は、最上の敬意を表す礼だ。


そんなトールを見て、ルーも慌てた声を出した。




「な、なにしてんだアンタ。姫ったってアンタの姫じゃないだろ?!」




トールのしている礼は通常、自国の王族に対してのみ行うものなのだ。

礼の作法は大陸の各地で異なるが、最高礼はどこもそう差異はないはず。




突っ立ったままあわあわする2人に、トールは顔をあげてため息をついた。



その顔はもう笑っていない。どうしたものかと言った風情だ。