「みすぼらしい身がお部屋を汚すことをお許しいただけますか?姫。」
もう、“門番殿”ではなかった。
当然ガルンのことも父から聞いただろう。
ガルンは立ち上がってスカートのすそをはたくと、きちんと作法通り会釈した。
「どうぞ、使者様。」
「それでは。失礼致します、姫。」
そう言って部屋に足を踏み入れたトールは、ドアを閉めるなりガルンの足元にうずくまった。
「な、なに!?」
「姫君に頭を下げられたらそれなりの返礼をしなければいけません、姫。」
そうトールは答えたが、どう見てもそれは会釈に対して返すようなお辞儀ではなくて、ガルンはとまどった。