リュードの娘に赤を着せてはならない。
それは、代々族長をつとめてきたリュードの家に残る、不可解な掟だった。
100年ほど前、赤を好んだリュードの娘たちが病で次々に死んだためというのが言い伝えだが、いまいち事実かどうかはっきりしない。
ガルンの言うとおり、いまいち迷信めいた掟だ。
しかしノルムは先祖を重く敬う土地だったし、赤が着られないというのは何か害があったり生活に支障がある掟というわけでもないのだ。
――ところがこの掟、ガルンにとっては害だった。
どういうわけか小さい頃から赤という色が大好きで、着たい着たいと何度もごねて母を困らせた。
しかし迷信だろうとなんだろうと、100年も続いた伝統を簡単に破るわけにはいかない。