世界最大の帝国の支配者から、こんな北の果ての、何もない小さな国に使者などあるはずもない。

だいたい、魔法族国家と非魔法族国家は交流を持たないのが普通だ。
ノルムは非魔法族だった。



「それに、あいつがそんな大層なものに見える?」




灯りのもとで見た使者のいでたちを思い出して、ガルンはますます笑い転げた。


顔立ちこそ美しいものの、マントを脱いだトールの格好はひどいものだったのだ。



「いや、俺は会ってないから分からないけど
・・・そんなにひどかったのか?」



つられて笑いながらルーがたずねると、ガルンは大笑いしながらうなずいた。


「ひどいなんてもんじゃないよ、ほとんど物乞いの格好。

どこで転んだんだか全身泥まみれだし、この寒いのに毛皮の一枚も持ってないんだよ!信じられる?」