「紅旗、ね――。
さっきも言ったけど、紅を基調にした旗を持つ国は、北原にはない。」



ルーはガルンの本棚から地理の本をもって来ると、地図のあるページを指した。



――大陸の北方は、ノルムのように町ひとつでひとつの国を成している小国ばかりが集まっている。

地図上ではそれを北方小国群と記し、人々は単に北原(ほくげん)と呼んでいた。



「北原の神話には、そういう色合いの神が多いからな。冬の神、雪や氷の神、北風、狼・・・ノルムは、夜と死の女神ノルミルド。

冷たい暗いイメージの神に守護を願うから、国の象徴もそういう色になってくるわけだ。」



「じゃあ、紅い旗はもっと南方のもの?」



ガルンの問いに、ルーはページを大幅にめくって、違う地図を出して見せた。