ふたりの今の状態はぱっと見、自分をからかって笑う恋人の背に抱きついてすねる少女、といったところだ。
だが、見る者が見れば、少女が完全に少年の命を掌中に転がしているのが分かるだろう。ガルンの細腕は、今にも頸動脈を絞め上げようという態勢なのだ。
「しかしまあ、俺は一生姫には敵わないんだろうな。こうも簡単に背後を取られるようじゃあなー。俺は強い主人を持ってしあわせだー。」
「うるさい!あんまり笑うと絞める!」
耳元でわめくガルンに、ルーはますます笑い転げながらぽんぽんと彼女の頭をたたいた。
「ははは、冗談やめろよほんきでしぬ」
――すねて真っ赤になる少女、なだめて頭をなでてやる恋人、などという図ではない。これ以上は命が危ないという降参のタップである。
現にルーの顔はみるみる赤くなっていた。