「そんなことかよ。
しょうがないだろ、最初からガル・・・姫じゃ話にならないって言ってたんだろ、そいつは。
長(おさ)にも追い出されたんだからどうしようもないだろ?」



笑いまじりの言葉に、ショールにくるまれた背中は何も答えない。

ルーは今度は優しくなだめる口調で言った。



「姫は姫の役目を果たしたんだから、気にするなよ。
あとは大人にまかせとけばいいじゃないか。どうせ難しくて俺らにはわからない話なんだから。」



「・・・」



やはり何も答えはなかったが、わずかな身じろぎとともに小さくミルクをすする音が聞こえた。

あんまり小さなその音にちょっとほほえみをこぼしながら、ルーはわざとらしく声を大きくして続けた。




「俺の主人は、勇敢にも正体不明のよそ者の前に立ちはだかって、一歩も引かなかった。そのうえその正体なんかどうでもいいと言ってる。大物だなあ。こんな大物の従者になれて俺は幸せだなあ!」



ぐむっ、と変な音を立てて小さな背中が大きく揺れた。むせているようだ。