「極北の町ノルムの門を守る、美しく若き番人よ」



明朗な声を張ると、背筋を伸ばし、彼は右のこぶしを心臓に当てた。

それは戦士に対する敬礼の姿勢だった。




「私の名はトール。

ノルムの族長ディールーン・リュード殿への“紅旗の使者”として参った。取り次ぎをお願いしたい。」



「こうきのししゃ…?」




聞いたことのない言葉だ。

“紅旗”という名の国か、人からの使いという意味なのだろうか。



どうしたらいいかわからなくて、ガルンが首を傾げると、トールと名乗った男はまじめな顔をやめた。黒い瞳はまた楽しげな光を宿している。



「要するに、族長に俺のこと言えば分かるってことだ。
ちゃんとさっき名乗った通りに取り次いでくれよ、門番さん。」