「それにしても寒いなここは。もう4月も半ばだぞ。」
今の発言でよそ者と認めたようなものだ。
しかも、たまにやって来る行商人でもないらしい。
彼らはこの荒野の気候を知り尽くしているし、もっと暖かくなった5月に訪れるものだ。
ノルムの4月はまだ明け方に薄氷が張る。
「で、何者なの、あんた。ひとりでこんなところに何しに来たの?」
短刀の柄に巻かれた革の感触を確かめながら、ガルンはもう一度たずねた。男はまたしばらくガルンの姿をしげしげとながめた後で口を開いた。
「何者かと聞かれたら、旅人、と答えるしかないかな。うん。
何をしにという質問に答えるのは難しい。」
「なぜ。」
「君に分かるように説明するのは時間がかかるし、君には関係ないことだからね、若い門番さん。」
怪しいにもほどがある。
ガルンはますます警戒を強くした。