「じゃあ、誰?よそ者だろう、お前。」
鋭く問いかけると、ガルンは片手で手綱を御しながらさっと背中に手を回した。
荒野に出るときはいつも、そこに狩り用の短刀を差しているのだ。
男は質問には答えずに、興味深そうにガルンの様子を見た。
「ノルムの女の子はみんな武の心得があるの?」
「…そうかもね。」
「君は町の番人?」
「…そんなところ。」
そんなわけはない。
ガルンは町のお姫さまだし、ノルムに女の門番はいない。
そもそもノルムには、狩りに出る女も馬で遠乗りに行く女もほかにいない。
ガルンのはったりを信じたのかそうでないのか、男はふうんと言っただけだった。それから、ぶるっと身を震わせた。