「へえ、君の一族は死の神をあがめるのか?」





背後から突然、声がした。




「!?」


驚いて振り返ると、丘の頂上、10歩と離れていないところにひとりの男が立っていた。



「ノルミルドは死の国の女神だろう。
死が守り神とはおもしろい町だね、ここは。」




ついさっきまで何の気配もしなかったのに、男は当たり前のようにそこにいた。



すでに太陽の姿はなく、あたりは青い薄闇に沈んでいる。
明朗な低い声から若い男と判別はできたが、顔の見分けもつかない。





――ただ暗い人型の影が、何もなかった場所にこつ然と現れたようだった。

背筋に冷たいものが走った。