(なんか、囲いに閉じ込められたヤギみたい。ノルムって)




人の力の及ばない天然の壁を見渡して、ガルンは思った。




(…で、この町があたしの囲い。)





ノルムの男たちは、傭兵や行商として出稼ぎに行くため、冬にはこの牢屋を出ていく。実りの少ないこの町にとって、現金収入が必要不可欠なのだ。





しかし女たちは、外の男に嫁がない限り一生町を出ることがない。

ガルンもこれまで荒地の外を知らずに育った。





土を耕し、ヤギを飼い、糸を紡ぎ、冬は機を織り、夫の帰りを待ちながら家を守る。それが普通の人生だ。





だから、成人を迎えた娘は女神の加護を込めた護身のナイフを授かる。

妻や母となって、家族を守るというあかしとして。