「…もういい。衣装なんてどうでもいい。晴れ着なんて着ない」
突然顔を上げると、ガルンは固い声でそう言った。
その目がさっきより頑強な光を宿しているのを見て、エリザは慌てた。
「何を言い出すの、そんなことできるはずないでしょう。町中のみんなが祝いに来てくれるのよ。」
それだけでなく、宴にはよその町の族長や豪族たちも招いている。
いずれガルンの嫁ぎ先となる家に対するお披露目でもあるのだ。みっともないことはできない。
どう説得しようかと焦る母を尻目に、ガルンは自分の思いつきに満足したように晴れやかな声で言った。
「そうだ、いっそ成人しなければいいんだ。
それでどこかの尼僧院に入ろう。そしたらもう家は関係ないし、掟も関係ない。尼さんも赤は着ないけど、こっそり着ればいいじゃない。
そう、そうしよう。」