「…着てみなきゃ、分からないじゃない…」
消えそうな声で反論してみたものの、説得力がないのは自分でも分かっていた。
ガルンが憧れてやまない真紅は、さっきのピンクにも増して浮いて見えるだろう。
似合わないのは昔から分かっているのに、それでもガルンは赤が好きだった。
そして、好きな色が似合わない自分が嫌いだった。
「ガルン。母さまは、あなたの大切な日に、あなたが一番きれいに見える色を着てほしいの。」
下を向いて黙り込んだガルンの肩にそっと手をかけて、エリザは言った。
「そして、わざわざ派手な色を着なくても、あなたはきれいなのよ。
それはとても価値があることなんだと、分かってくれるとうれしいのだけど…」
それはたったひとりの娘を愛する、心からの言葉だった。
それを聞いたガルンは、そのまま何も言い返さなかった。
あまりに長いこと黙って突っ立っているので、エリザは娘がとうとう心を動かしてくれたのだと思ったのだが…