「で、その友達はどうしたいんだ?」

手嶋先生が俺を見た。

「分かりません。
それに彼女は、友達が慕っている先輩が好きなんです。」

諦めるしかない、そう言って俺はグラスに残っていたビールを飲み干した。

「その程度なら」

手嶋先生がぽつりとつぶやく。

「え?」

「簡単に諦めがつく程度なら、きっとそれは大した恋じゃないさ」

手嶋先生は会計伝票を持ち、席を立った。

「結論の出ている相談なら、今度は俺以外にしてくれると助かる」

手嶋先生にそう言われて、俺は一人残された。

取り残されて、俺は手嶋先生の言葉を反芻した。

簡単に諦めがつくなら、それは大した恋じゃない。

それなら、俺の山田への思いは取り立てていう程のものじゃなかったのだろうか。