当時、俺と中村の噂を知らない人は校内にはいなかったかもしれない。
事実無根の噂が独り歩きしていた。

「よく主任も、今回の指導担当にしたもんだよ」

俺は好きで中村の担当になったわけじゃない。

顔にそう書いてあったのか、手嶋先生は笑って言う。

「時間が解決してくれるよ」

時間が解決する、はたしてそうだろうか。

中村は未だに俺を忘れられないといい、俺自身も彼女への苦手意識を克服できていない。

教師と生徒の恋愛がうまく行くはずないというトラウマにさえなった。

俺は臆病なんだ。
だから、山田のことも見ているしかできない。

手嶋先生のような人を好きだとしても。
他の男が山田に好意を持ったとしても。