「山田のことか、それともあの実習生か?」

急に手嶋先生が本題を切り出したため、俺は思わずむせてしまう。
俺はそんなに分かりやすいだろうか。

「手嶋先生は、好きになってはいけない人を好きになってしまったことは?」

お酒の力を借りて、少しは素直になれたようだった。

「俺じゃなくて友達の話ですけど」

しかしながら諦めの悪い俺に、手嶋先生は苦笑する。

「来年まで待てばいいだろう」

山田は来年卒業する。
手嶋先生にはすっかりお見通しということだ。

「状況は違うけど、以前、待ってもらって付き合った結果、ダメになったことがありました。
もう繰り返したくない」

「―――そういや、あのとき噂になっていたな」

手嶋先生はつぶやいた。