佐藤先生には、幸せになって欲しい。

エゴだと言われるかもしれないけど心からそう思う。

俺は彼女に小さく頭を下げて、飲み屋を出た。

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外の風は冷たく、酒でほてった体に気持ちいい。

「飲み直すか?」

「ああ…」

洋平の言葉に頷きながら、ふと今何時なのだろうと思った。

飲み屋が地下だったために、時間の感覚がほとんどない。

時刻を見ようと携帯電話を取り出すと、センターから着信ありとの知らせがある。

山田からだった。

「悪い、ちょっと」

俺は慌ててかけ直す。

山田から着信があったのは、別れてから初めてだった。