「ずっとひっかかってたの、何で振られたんだろうって。
良かった。
嫌われたんじゃなかったのね」

「責めてやればいいのに」

林原の言葉に、佐藤先生は苦笑しながら首を振る。

「責めるよりも、ホッとしちゃった」

佐藤先生は注文したカクテルを一口飲んで俺を見た。

「いつから、その子を?」

佐藤先生と付き合った期間とかぶっていたため、俺は少しためらう。

「今年の春、かな…」

俺は記憶を辿るようにしてつぶやいた。

いや、もしかしたら冬のあの日、放課後に出会ったときにはもう惹かれていたのかもしれない。

「そうだったんだ…」

「すみません」

「責めてるわけじゃないの。
先生の気持ちが私にないのは分かってたもの」

だてに長いこと片思いしてたわけじゃないのよ、と彼女は笑った。