学校は家からそう遠くない、歩いて通える距離にある。
お決まりの道は、今は春先の香りに包まれている。
その通学コースには、クラスメイトが『幽霊屋敷』と呼んでいる、中世の城のような建物がある。
固く閉ざされた門に阻まれたそれは、立ち入ることを拒むかのようだ。
何年も前から無人のようだが、何か理由があるのか、朽ちているわけでもなく、壊される気配もない。
それが何となく気になって、たまに門前で立ち止まってしまうことがある。
しかし、いくら見つめても、やはり人の気配はないし、窓から影が覗くわけでもないのだ。