ガチャッ!!
私は服装を軽く整え、
資料室を出た。
「はぁっー・・・」
私は一つため息を吐いた。
「髪が乱れてますよ、
どうしたんですか?」
「えっ!?」
すると、いきなり声が・・・
「次原・・・さん・・・」
私の前には次原愛美が立っていた。
「どうしたんですか?
ここで何をしてたんですか?」
「えっ!? いや、何も・・・」
「へぇ~・・・
さっき阿部部長がここから
出て行きましたけど・・・?」
ドキッ!!
私じは一瞬、心臓が
締め付けられるような気がした。
「今日は政文が元気ないんです、
なんでか知ってますか?」
「えっ!?
さぁ、知らない・・・」
「あなたのせいですよ。」
「えっ!?」
次原愛美は鋭い目つきで私を睨んだ。
「政文は解りやすいんです、
ああやって落ち込む時は、
必ずあなたが絡んでます。」
「そうなんだ・・・」
「他人事ですか?」
「えっ!?」
「政文は言わないけど、
だいたいあなたが何をしかたかは
わかります・・・」
ズキンっ。
私は胸が痛んだ。
「それなのにこんなとこで
阿部部長と・・・
あなた・・・最低ですね!」
「・・・・・」
「二度と政文に近付かないで!!」
愛美は強い口調でそう言って、
去って行った。
政文・・・
私の心の中は痛みさえも消え、
からっぽになってしまった・・・
それからも部長との関係は続いた。
定時になったら呼ばれて、
体の関係を迫られる。
酷い時は勤務時間内でも
迫られることがあった。
しかし部長との接触は会社の中だけ、
外では誘われることはない。
こんな関係でも断れない、
相手は会社の上司だ。
断れば私の仕事にも支障が出る。
それに今はこんな関係でも
いつかは必ず部長を
自分のモノに出来るはず、
そう思っていたから・・・
でも、私・・・
本当にそれを望んでいるのだろうか?
と、いうより、
心にぽっかりと穴が開いてしまって、
今は何も考えられない・・・
政文・・・
もう、あなたと話すことはできなにの?
あなたの笑顔は見れないの・・・?
私はオフィスを出て
会議に向かう途中・・・
嫌な視線を感じた。
二人の女子社員が私を見ていた。
『東條さんって、会社のかなりの人数の
男と関係があるみたいよ?』
『ああ、それ聞いたぁ~
部長だけじゃ物足らず、
同僚や後輩にまで手を出してるって・・・』
『ちょっと綺麗だからって嫌よねぇ~
男にだらしないって!!』
『お高く留まってるけど、
自分は安売りはしないと
思ってたのに・・・』
『所詮その程度の女なのよ!!』
『フフフッ』
女達は私に聞こえてないと思ってるのか、
聞こえるように言ってるのか、
ヒソヒソと私を見て話している。
何よあれ・・・
なんで私がこんなこと
言われないといけないのよ・・・
私は怒りが込み上げてきた。
しかしそう感じるのは
この時だけではなかった。
女性社員とすれ違う度に
私の悪口が聞こえてきた。
そのうち女子社員全員が
私の悪口を言ってるかのように
見えて来たんだ。
「ヒソヒソ・・・」
「ヒソヒソ・・・」
もう・・・嫌・・・
男性社員も今までとは
明らかに違う。
「麗奈ちゃん、今日空いてる?」
と、馴れ馴れしく肩を組んで、
明らかにいやらしい言い方で誘って来る。
「いえ、今夜は無理です・・・」
「ええ~っ、あかんの?
今日は誰とお泊り?」
「はっ!?」
「俺でも相手してくれる?」
「・・・・・」
そんなことを言ってくるようになった。
今までとは全然違う、
軽い女の扱い・・・
なんでそんな言い方されるの?
あんたなんか眼中にないわよ!!
そう叫んでやりたかった。
そんな私を晴美は、
「気にすることないよ、
麗奈がそんな子じゃないことは
私が一番良く知ってる。」
そう言って元気付けてくれるけど、
やっぱり辛い・・・
私はどこにいても居場所がなくて、
仕事以外の時間は逃げるようにして
オフィスを出て、一人屋上にいた。
いくら考えても辛いだけ、
なるべく何も考えずに
遠くの景色をボーっと眺めていると、
「麗奈。」
突然名前を呼ばれた。
「み、美和子さん・・・」
そこに立っていたのは、
新入社員の頃にお世話になった、
美和子さんだった。
雨宮美和子(アマミヤ ミワコ)
入社10年目の32歳。
バりバリのキャリアウーマンで、
会社からの信頼も厚い。
容姿端麗で、おまけに豊満な胸!!
この会社の美人四天王の一人だ。
「どうした? 元気ないね?」
美和子さんはゆっくりと
近付いて来た。
「はぁ・・・」
美和子さんも知ってるんでしょ・・・?
私が何を言われてるか・・・
「えらく噂になってるみたいね?」
「はい・・・」
「いいじゃない。」
「えっ!?」
「何人もの男と関係がある?
いいじゃない、いい女の勲章でしょ?」
「勲章・・・?」
私は思いがけない美和子さんの言葉に
固まってしまった。