漆黒の先は砂漠だった。
違和感を覚えて下を見ると、
私の履いていたスニーカーが
白い布靴に変わっている。

服にも変化があった。
深い藍色の長い袖に、
長くゆったりしたズボン。

「今回は東洋風だね。
 エジプトでは少し目立つな。」
 風が暢気に言った。
 
――どうしてエジプトなの?
 と言いかけて、口をつぐんだ。
 
ピラミッドだ。遠くに小さく見える。

綺麗な衣装に舞い上がって
はしゃぎすぎた姉妹は、
兄弟についてとぼとぼと、
人一人見当たらない砂漠で
街を目指してただただ歩いた。

楓と並んで歩きながら、
先を行く兄弟をこっそり観察する。

風は能天気で、よく喋る。
それに比べて凛は
無口であまり笑わないし、
話す時も人と目を合わさない。

+と-、S極とN極、
実に対照的な兄弟だ。

こうなるとお喋りの楓と風が、
自然と並んで歩く事になる。

口下手な私は凛の隣を、
少し気まずい気持ちで歩く。