そう……今はゼノの言ってる事が、
真実か否かなど関係ない。
私達が必死に看病しても、
輸血も薬もないこの世界では、
凛を助けられない。

この状況で唯一残された可能性が、
ゼノの言う伝説なのだ。
おまけに壺は皆が欲しがる代物で、
世界各地を転々としてきた。

その場所さえ分かれば……
賭けてみる価値はあるはず。
「私、凛を助けたい。
だからお願い……私に手を貸して。」

翌日。
「彼女の生まれし地」と思われる島へと
朝早く出発する事になった。
 
メンバーは私、楓、風、アッサと、
バルド一族だ。

「凛が負傷した?」
バルドは疑わしそうな目で私を見た。
「何があった?」
「実は私……私のせいなんです……」

「誰のせいでもないよ、桜ちゃん。」
風は空を見上げながら言った。
「誰も悪くないんだ。
そういう、運命だったんだよ。」

そんな一言で簡単に片づけて欲しくない。

「桜……」
私の心中を察したのか、
楓は辛そうに目を伏せた。

船はエジプトを離れ、
島を目指して猛スピードで動き出した。
バルドの船は相も変わらず揺れがひどく、
私達は座り込む事しか出来なかった。

今日は、十月二日。