―――その御霊、
生まれし地へと戻りし時、
止められた時間は再び歩み始め、
  彼女は世に甦る。

「彼女は目覚めさせた者の願いを叶え
如何なる病をも治すだろう、とな。」

「何だよ……それ。」
風はゼノを睨んだ。
「伝説なんでしょ?
あんたの言う事なんて当てにするか……」

「それは、何処なの。」
「桜……?」
楓が驚いた様に私を見た。

「その彼女の生まれし地って、
どこなの、ゼノ。」
「桜ちゃん、ゼノの言う事を信じるの?
あくまで伝説なんだよ?」

「それが……どうだって言うの?」
「桜、何言ってるの?」

「楓もだよ。どうしちゃったの?」
 私は凛を見た。お願い、二人とも……

「私達がここに残っても、
 凛は助からないんだよ?
伝説でも何でもいい。
目の前に凛を救える可能性があるのに、
それをしないなんて……」

私は手を強く握りしめた。
爪が掌に食い込んで、床に数滴、
朱い滴が垂れる。
 
「二人とも……凛がこのまま
死んじゃってもいいの……?」
「――っ。」