頭を抱えるゼノを見て、
クイルが助け舟を出した。

「落ち着け、風。
今は血も止まってるし、
皆で面倒見てりゃ、そのうち……」
「もういい。」
ゼノが顔を上げた。

「もういいんだ、クイル。
それじゃ凛は助からない。」
「助からないって、それじゃあ……」
私は目の前が真っ暗になった。

「だが一つだけ可能性がある。
それが、ペルシアの壺だ。」
 
ゼノの言葉に、
そこにいた全員が顔を上げた。

「あれを試すのか?」
「でも、あれはただの伝説だろ?」
「騒ぐな。」
ゼノは皆を静めると、私達に向き直った。

「実はペルシアの壺には、
ある伝説があるんだ。」
ゼノは目を閉じると、ゆっくり話し始めた。

「ペルシアの壺には、
かつてペルシアを支配した王に
寵愛されたある姫君の魂が
収められているという伝説がある。
王は亡くなる間際に
側近の術者に命じて、
若く美しい姫の魂を壺に閉じ込め、
その永遠を願ったという。」