「はい、タッチ。」

誰かが頭を優しく撫でた。
目を開くと、
凛が優しい目でじっと見ている。
 
「凛……」
「ただいま、桜。」

風と拳を合わせると、
切羽詰まった様に言った。

「ゼノ急ごう。奴らすぐ追って来るぞ。」
「さぁ、こっちだ。
 後はアッサとクイルに任せよう。」

慌てふためく街の人々を掻き分けながら、
民家のわきを抜け、砂漠へ向かう。
 
振り返ると、炎上した城から、
太い煙の柱が昇っているのが見えた。
「王子と陛下、大丈夫かな?」

「一番最初に避難したと思うよ。
心配ないって。」
「無事だといいなー。」
楓は走りながら空を見上げた。

ようやく砂漠に入った。
私達は息を整えながら、
隠れ家を目指してゆっくり歩いた。
心臓が強く脈打って、頭が破裂しそうだ。

ふと、凛が少し遅れているのに気付いて、
声をかける。

「さっきは本当にありがとうね、凛。」
「――っ。」

その時、凛は崩れる様に倒れた。