突然裏門の方から視線を感じて、
私は凍りついた。

目を凝らすと、
炎の向こうにゼノらしき人影が見える。
もう着いたのか……
さすが刺客、動きが素早い。

早く、ゼノの所へ行かないと……
私は走った。
大丈夫、誰も私の事なんて――

「ジリウス様!女です、女がいます!」
「な……」
私は思わず振り返った。私のこと?

「刺客の一味だ。ひっ捕らえろ!」
まずい、ジリウスの指示が下った。
捕まる……

刃と刃の交わる音、兵士の呻き声、
そして――

「桜!」
「凛!何してるの!」
「ここは俺が食い止めるから、
早く行け!」

「何してる?早く女を捕えろ!」
ジリウスの叫び声だ。
「させるかっ!桜、行け!」
「凛……」

『凛を残して逃げる』というのは、
正解と言えない行動だったかもしれない。
 
でもその時の私には、
凛の気持ちを無碍にして、
そこに残るとこは出来なかった。