楓と風は石段に腰かけ、
仲良さそうに話している。

取り残された私と凛は無言で、
地に這うアリ達を見つめていた。

さっきからずっと
大きな蛾の死骸を運ぼうと
奮闘していたのだ。

そこへ少し大きなアリが二匹、
獲物の横取りにやってきた。

小さなアリは沢山いるものの、
大きなアリの前では
どう取っても無力に見えた。

私が手で大きなアリを払うのを見て、
凛が口を開いた。
「どうしてそんな事をしたんだ?」

それは咎めているというよりは、
好奇心のようだ。

「だって可哀そうじゃない。
 さっきから頑張っていたのに。」
「大きい奴だって、横取りしようと
 頑張ってたいだろ。」

「横取りはいけない事でしょ?」
「そうか、それもそうだな。」

澄んだ綺麗な声。
でも、どこか寂しそう……