貯蔵室の奥から、
壺を持ったゼノと風が出てきた。

「脱出しよう。もうこの城に用はない。」
ゼノは壺を麻袋に入れながら、
ゆっくりと言った。

ゼノ、風、楓、私、凛、二人の大男
の順に階段を駆け上がる。
一階に出るとアッサとクイルについて、
脇目も振らずに
炎に包まれた廊下をひたすら走った。

既にこんな所にまで、
火が回っていたなんて……

裏門に向かう途中も、
私は一度も振り返らなかった。
ここで振り返れば、途端に
炎の渦に呑み込まれてしまいそうで。

裏門に出る扉まで辿り着いた。
城内にもう誰もいないと思ったのか、
ただ火の回りを食い止めたかったのか、
その扉は外側から封じられていた。

押しても引いても、びくともしない。

ゼノが仲間達に合図した。
アッサとクイルと二人の大男が
扉に体当たりを仕掛ける。

ほどなく、扉は開いた。

「よぉ、やっと出てきたか。
待ってたぜ、ネスミの皆さん。」

聞きたくもない声……それはあの、
腰に剣を刺した兵士のものだった。