「その通りだ、風。よく分かったな。」
背後で声が響き渡る。

驚いて四人一斉に振り返ると、
ゼノが階段を降りてくるところだった。
 
「廊下の見張りは?」風がすかさず聞く。
「アッサとクイルに
代わってもらってる。」
そう言うと、ゼノはそっと扉に触れた。
 
「この扉には、開いた者に死をもたらす
という呪いがあってね。
それが侵入者に対する攻撃の罠だと
読んだ俺達は、兵士を身代わりに
する事にしたんだ。」

「そんな……」凛は愕然としている。
「まぁ仕方ないね。
俺達がやられる訳にいかないし。
ゼノ、壺はどれか分かるの?」
 
口もきけずに座り込む姉妹と、
立ち尽くす凛をよそに、
風はゼノと壺を探しに行った。

――死に至る罠があると知っていて尚、
計画を遂行するなんて……

私にはゼノの考えが理解出来なかった。

「怖い……桜、あたし怖いよー……」
私の腕にしがみ付く楓を見て、思った。

人は自らの理解の範囲を超える事に対し、
恐怖心や不安感を抱く。

楓が今怖いのは、ゼノ?
それとも……風?