一同が城壁の端に辿り着いた頃、
辺りは闇に包まれていた。
監視塔に炎に覆われているのを見て、
ゼノに緊張が走る。
「アッサ!」
アッサは頷くと、門の方へ向かい、
門衛の一人を物陰に引きずり込む。
 
少しして、門衛の服を纏った
アッサが出てきた。
何だか窮屈そうに見える。

もう一つの監視塔にも
炎が舞い上がる。動ける兵士達の
ほぼ全員が、二つの塔に向かう。
城は、恐怖と混乱に満ちていた。

「ゼノ……」
「行くぞ。ついて来い。」
私の心を読んだのか、
ゼノは言葉を遮った。
もう後戻りは出来ない。

ゼノについて叫び声の中を、
脇目もふらずに真っ直ぐ
入口を目指して走り抜ける。
周囲の兵士達は火柱に気を取られ、
私達に見向きもしなかった。
城の中央にある入口が見えてくる。

熱さと緊張で体中に汗がにじみ、
目は煙で涙ぐんで前が見えない。

城の扉は開け放たれていた。
中に入って辺りを見渡すと、
女中達が駆けずり回っている。

私達はすかさず左折すると、
地下へ続く階段に向かった。
出口と逆方向に向かう私達は、
奥へ入れば入る程に目立っていた。