「何かあったら一人ずつ逃げるんだ。
五人一緒だと目立つ。
逃亡ルートは五通り考えてある。
全員裏門で待ち合わせだ。
いいな?」

何より私が気になったのは、
仲間達がせっせと武器に
毒を塗っている事。
 

人を殺めるつもりなのだろうか?
ペルシアの壺は、
そんなに価値のある物なのか?

何度もゼノに詳しく聞こう
と思ったけど、やめた。
変にゼノに疑われたくない。

ついにその日が来てしまった。
私は罪悪感にかられ、
暗い気持ちで着替えていた。
王子にはあれ程お世話になったのに、
彼が住まう城を襲撃するなんて……
ものすごく恩知らずで、
愚かな事に思えた。
楓と兄弟も同じ事を考えているのか、
暗い顔で準備をしている。

十月一日、午後四時。
先に城へ向かうクイルを見送ると、
仲間達は武器を積み込み、
クイルの後を追った。

緊張でそわそわ落ち着かない私を、
凛がそっとなだめる。
「心配するな、桜。
俺がお前を守ってやる。
これが終わったら……」
「これが終わったら……?」
「いや、全て終わったら言うよ。」