「あたしがついて行ったら
 駄目かなー?」
……ん?
「あたし達か。
 桜も行くでしょー?」
……ん?

茶髪が驚いた様子で聞いた。
「あの、君達が今回の案内役なの?」
「ううん、これを土手で拾ったから、
 返しに来ただけー。あたし、楓。」

「そっか……わざわざありがとう。
 俺は風。君は?」

「ん、桜です。」
そう言って黒髪に目を向ける。
「手紙に書いてあるだろ。」

黒髪は私の心を読んだように言うと、
地面にしゃがみ込んで何かし始めた。

「凛くんね、宜しくー。ねぇ……
 あたし達も行っちゃダメ―?」

「いいよ。」と言う風の声と、
「駄目だ。」と言う凛の声が重なる。

二人は顔を見合わせていたけど、
やがて凛がゆっくりと逸らした。

「いいのねー?」
楓は促したけど、凛は答えなかった。

午後十一時五十分。
鳥居に変化が表れ始めた。

どことなくピントが合わない様な、
歪んでいる様な、そんな気がする。
何かの錯覚だろうか?