不味い物は
何百回食べても不味くて、
美味しい物は
何千回食べても美味しい。
楓は環境に適した動物ではない。
そんな楓が
風を失ったらそうなるか……
考えたくもない。

恐らく一生忘れられない
悲しみと苦しみを背負って
生きていくのだろう。

私はまた、どうしようもなく
無力さを思い知らされた。
やりきれない気持ちで、
胸がいっぱいになる。

ゼノの家には二日後に着いた。
アッサが念のため遠回りとしよう
と言い出したからだ。

二日間砂漠を歩いていて
分かった事がある。
ゼノのやる事は効率が悪い。

ゼノ一族は都から離れた場所で
生活している。小さな町の外れだ。
砂漠に近く、厳しい環境の中で
生活しているというのに、
何故選りにも選って
黒い服を着るのか。
刺客の本業は夜行うといえ、
着替えればいい話だ。

やっとの事で帰ってきた私達に、
ゼノは甘いお酒をご馳走してくれた。
この隠れ家にいる限り毎日が特訓だ。